うつ病100万人超す、10年で2・4倍に
読売新聞12月4日3時4分配信
~~~記事引用~~~
抑うつなどの症状が続くうつ病の患者数(躁(そう)うつ病を含む)が、初めて100万人を超えたことが3日、厚生労働省が3年ごとに実施している患者調査でわかった。
長引く不況などが背景とみられる一方、新しい抗うつ薬の登場が患者増につながっていると指摘する声もある。
患者調査によると、うつ病が大半を占める「気分障害」の患者数は、1996年に43万3000人、99年は44万1000人とほぼ横ばいだったが、2002年調査から71万1000人と急増し、今回の08年調査では、104万1000人に達した。
10年足らずで2・4倍に急増していることについて、杏林大保健学部の田島治教授(精神科医)は、「うつ病の啓発が進み、軽症者の受診増も一因」と指摘する。
うつ病患者の増加は、新しいタイプの抗うつ薬が国内でも相次いで発売された時期と重なる。パナソニック健康保険組合予防医療部の冨高辰一郎部長(精神科医)は、「軽症のうつは自然に治るものも多い。しかし日本ではうつを早く発見し、薬を飲めば治るという流れが続いており、本来必要がない人までが、薬物治療を受けている面があるのではないか」と話す。
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このニュースをそのまま読むと、新しい抗うつ薬が病人を増やしているように感じた方も多いのではないでしょうか?誤解を与えやすい記事ですので解説をしておきます。
このニュースでいう新しい抗うつ薬とは一般的にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を指します。SSRIは従来の薬に比べて副作用が少なく投薬しやすくなっています。
また、抗うつ薬は投薬をやめる時は要注意です。少しずつ量を減らしていき、やめた後も経過観察が必要です。そのため一度投薬すると長期化する傾向にあります。
以前は、副作用の多い薬しかなかったため投薬の弊害が大きく、軽症な方には投薬を控えカウンセリング対応が多く行われていました。しかし病院では患者に対応する時間が限られてしまうため、時間のかかるカウンセリングよりも投薬の方が数多くの患者さんを支援することができます。
SSRIが発売されたことで、心療内科や精神科で投薬しやすさから「カウンセリングによって改善できる軽症の方にも少量を投薬するため、投薬されている患者数が増加しているのではないか」というのが、この記事のポイントです。
後半で冨高部長が「軽症のうつは自然に治る。本来必要ない・・・」とコメントされています。「自然に」というのは「放っておいても」と言われているわけではなく、「カウンセリングで改善が可能な・・・」という意味かと思います。
カウンセリングと投薬のどちらが適切かはなかなか分かりません。カウンセラーは、皆様の症状に応じて適切な対応を考えています。我々も症状に応じて病院を紹介することもあります。
今後は今まで以上に、病院とカウンセラーが連携し役割分担していくことが必要になるでしょう。そして皆様とカウンセラーが一緒にご自身の症状に合わせた適切な治療を考えていただく必要があると考えています。
私の知人でも「抗うつ薬を飲むと病気が長期化する」と思っている方が多くいらっしゃいます。このような記事の表面部分を読み、誤った知識が形成されているのではないかと危惧します。
田島教授が「うつ病の啓発が進み・・・」とコメントされています。一般に心の病が理解される段階までようやく来たと思います。しかし、今回のように誤解を生みそうな記事も多く、これからも我々は啓蒙活動に努めていかなければならないと強く思う記事でした。
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